【シリーズ第1回】生徒の思考を覗いてみよう:どのように生徒が考えるのか

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生徒の思考を理解することの重要さ

どのように生徒が思考するかを理解することは一見アートのように捉えどころのないように思えますが、科学のように体系的に分析し、理解することができます。

生徒の思考を理解するスキルを身につけると、生徒がどこで間違えやすいのかを予測して、生徒が理解できるように解説する準備ができます。

 

また、あるテーマについて生徒がどのように理解していき、学習が進むに連れて理解度がどう変化するかを知ることができれば、先生は生徒の疑問を解消しながら授業を進めていくことができるでしょう。

このように、生徒の思考を理解することは先生にとって必要不可欠な能力ともいえます。このようなスキルは生徒とたくさん関わる経験を積んで初めて身につけることができます。

 

しかし、生徒の思考を理解するスキルを体系的に学ぶ方法は今までほとんどありませんでした。

大規模なデータを収集し、「生徒が授業やテストに対してどう反応しているか」を分析するような研究に、先生が触れる機会が少なかったからです。

 

目の前のクラスの生徒の反応を確認することはできますが、一つの教室でから得るデータは、先生の教育方法によって個別さや偏りが出てしまうため、正確ではありません。一方、大規模なデータを分析することで、どの生徒においても役に立つユニークな学習方法を見つけることができます。

 

生徒の学習データを集める方法

Edmodoはテクノロジーを使って生徒と先生の協力関係を構築する巨大なプラットフォームであり、8000万人以上の利用者がいます。Edmodoは世界最大級の学習ネットワークであると同時に、世界最大級の生徒の学習データを持っています。

全ての学習者の潜在的な能力を最大限に高めるために、生徒たちが必要としている人材や教材などに簡単にアクセスをし、全ての学校現場における教育をの質を改善することがEdmodoの使命だと思っています。

現在、ビッグデータが話題になっています。Edmodoが持つ大量の生徒の活動データを用い、生徒の学習を促進させることができます。

 

Edmodoは最近American Mathematics Competitions(AMC)のテストをEdmodo上に公開しました。

数ヶ月で約300万人の生徒がこのテストの問題に取り組んでくれました!

物理的にこのような大規模なデータを集めるのはほぼ不可能です。

 

AMCテストで集めたデータから、生徒がどのように学ぶかということに関する気づき、つまり先生がどのように授業に取り組めば良いのかがわかるヒントが含まれているのでしょうか?

私たちはここ数ヶ月、この問いへの回答を得るために分析を行い、分析の結果を今後数週間にわたって5つの記事に分けて皆さんに紹介していきます。 

 

生徒の思考を分析する新シリーズについての概要

AMCで集めたデータを用いて生徒の思考を分析する、この新しいシリーズでは、数学における具体例を紹介しながら、生徒がどのように考え理解するのかの主要な方法をお伝えします。

また、生徒の学習を助けるために授業内で使える実践的なアドバイスも紹介します。

具体的にどのように生徒が抱えている問題にアプローチできるかを知るだけではなく、どのように生徒が学び、どのように大規模なデータが先生のスキルアップに役に立つのかを学ぶことができます。

 

一つ一つの記事は数学のトピックに関係することです。これらの記事では生徒がどのような問題でミスをし、どのように考えるかを例を通して見ていきますが、主に以下のテーマに記事は重きをおきます。

  • 比率と割合に関して生徒がどう理解し、誤解しているか
  • 面積と周囲の長さにどう理解し、典型的な間違いはどのようなものか
  • 算数文章題をどのように解くか- 生徒の間違いのデータを用いて、どのように効果的に教育できるか
  • 生徒がどれほど過去に学んだことを習得しているか

その前にデータの解析と生徒のプライバシーについてお伝えしますEdmodoは常に全ての利用者のプライバシーを保護するために全力を尽くしてきましたし、生徒のデータを守るために高水準の秘密性を保ってきました。

 

ここで紹介する分析は全て匿名化されているデータであり、分析した研究者でさえテストに答えた生徒が誰なのかを知りません。

ここで分析されているのは生徒全員や好成績の生徒、などの大きな生徒の集合体であり、個別の生徒やクラス、学校の分析を行っているのではありません。

また、これらの記事や分析はAMC Grade 8、10、そして12の結果のみを元にしており、他のテストなどを元にして分析していません 

 

生徒の学習データの分析方法

分析の方法:AMCによって1250問以上の問題が8年生(中学2年生)、10年生(高校1年生)、12年生(高校3年生)に出題され、その結果を分析がされました。

Edmodo上では50万人以上の生徒がAMCの問題のうち最低15問は答えました(多くの熱意のある生徒は何百問も回答しました)。

数問だけ答える生徒がいる一方で、もっと多くの問題に回答する生徒がいるなど、生徒は好きなだけ問題に回答することができました。

 

これは順位付けするようなテストではなかったため、テストの中にある問題全てに答える必要はありませんでした。

また、生徒はどの学年のテストでも受けることができたので、特定の分野がどれくらいの習熟度かということを、学年ごとに比較、分析することができました。

分析の一部では、一定数の生徒が回答した問題群に注目をしました。

特に、8年生(中学2年生)と10年生(高校1年生)の分野から50問ずつを選択し、12年生(高校3年生)の分野からは24問に選び、注目しました。例えば、4万7000人の生徒は8年生のある分野の50問すべてに回答しました。

 

特定の問題群に注目することで、高いパフォーマンスを発揮した生徒と低いパフォーマンスしか発揮できなかった生徒の相関関係を分析することができます。そしてこの分析はこの後のグラフで示します。

  

具体的な分析結果

では、AMCテストのなかの特定の問題群を分析することで、生徒がどのような思考プロセスであるかのヒントを見ていきましょう。

 

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【問題】

初めて実施されたAMC8は1985年に開催され、それから毎年AMC8は開催されています。サマンサは12歳の時に第7回AMC8を受験しました。サマンサは何年に生まれたでしょう?

  1. 1979年 (36%)
  2. 1980年 (23%)
  3. 1981年 (15%)
  4. 1982年 (15%)
  5. 1983年 (12%)

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回答者数:43万763人 無回答:480人

 

このように43万人以上の生徒がこの問題に回答をしたので、信頼性の高いデータを集計することができました。

データから36%の8年生の生徒がこの問題に正解できたことがわかります。

この問題は4年生の分野である「2桁以上の足し算、引き算を正確に解く」という能力を確認しています。それと同時に、この問題の難しいところは、文章をしっかりと理解し、どのような計算式で正解まで導くかを考え抜くことです。

 

サマンサが第7回AMCを受験した時に12歳になったので、第1回AMCの頃サマンサは(12-6=)6歳だったと、生徒は理解しなければいけません。

そして、サマンサが1985年に6歳だった場合、サマンサが生まれたのは、"1979年"という正解を導くことができます。

一番多かった間違いは、第一回AMCが開催された時のサマンサの年齢を12-6ではなく、12-7=5と計算してしまうケースです。

このように計算してしまった生徒は1985年にサマンサは5歳だと勘違いをし、1980年にサマンサが生まれたという間違った答えに辿り着いてしまいました。

では、成績の良い生徒はどの回答を選択し、成績が振るわない生徒がどの回答を選んでしまったのでしょうか?

選んだ選択肢と質問の集合体の平均点の相関関係を分析するために、以下のようなグラフを描くことができます。

 

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選んだ選択肢と質問の集合体の平均点の相関関数

A 58%

B 29%

C 24%

D 23%

E 23%

*Aの選択肢を選んだ生徒はBを選んだ生徒の2倍の点数を収めていることがわかります

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表の右側を見ると、正しい選択肢が黄色でハイライトされています。

どの選択肢をどれくらいの生徒が選んだかの割合(%)が記載されています。

横軸はその問題群の点数を表しています。横軸の左側に行けば行く点ほど、テストの点数が低い生徒を表しています。横軸の右にある点は、多く正解しテストの点が高い生徒を表しています。

縦軸は生徒の割合(%)が表されています。

 

この表を見ることで、

平均点10点の生徒はA~Dのどの選択肢も同じくらいの確率で選んでいるのがわかります。

平均点が18点の生徒までは、選択肢AとBを同じぐらいの確率で選んでいることがわかります。

 

この結果から学業に苦しんでいる生徒が何を考えているかがわかり、レベルの違いによってどのような間違いが多いかを知ることができます。

また、20点以上の点数の生徒に関しては(Bの選択肢を選ぶことを除き)この問題を間違えることはあまりないということもわかります。

表の右側を見ると、選択肢Aを選んでいる生徒が顕著に好成績だということが示されています。

 

 

分析結果をどのように授業に生かせるか

先生はこの分析をどのように授業に生かすことができるでしょうか

テストの中で重要な問題を選んで実施します。その問題で、選んだ回答によって生徒をグループに分け、グループごとに指導を行うことができます。

サマンサが生まれた年を選ぶ問題においては、選択肢Bを選んでしまう生徒が20-30%と多くいることからもわかるように、いくつかの例題を通して選択肢Bは間違っているのかを解説する必要があるかもしれません。

違うグループは、それぞれの生徒がなぜその答えを選んだかの説明を1、2行書かせることで、どのように間違った理解をしてミスが起きやすいかを生徒と一緒に話し合うことができます。

 

データの持つ意味を自分で考えてみましょう!

時には、データは思わぬような結論を導き出してくれます。次の問題を見てみましょう。

 

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【問題】

レイチェルは家族のために8つのハンバーガーを作るために3パウンドの肉を使いました。もしレイチェルが近所にピクニックにいくために24個のハンバーガーを作る必要があれば、何パウンドの肉が必要でしょうか?

  1.                   6
  2.                   6 ⅔
  3.                   7 ½  → 間違いの中で一番多く選ばれた選択肢
  4.                   8
  5.                   9 → 正解で、一番多く選ばれた選択肢

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どうして多く生徒は7 ½ を選んだのでしょうか。8や6 ⅔という選択肢より圧倒的に多く7 ½という選択肢が選ばれました。 

Edmodoはこの記事で使った問題のパフォーマンス分析をして頂いたEducational Initiatives, Inc. に感謝の意を表したいと思います。

この記事やこの問題の分析について他の先生とディスカッションしてみませんか?